【人生はプース・カフェ Barに集えば…】イスラエルの夏2001 ⑦『キブツの日常』

お酒

プース・カフェとは、様々なリキュールの比重の違いを活かし、幾重に鮮やかな色が重なるカクテル。人生もまた色とりどりの思いでの重なり…


【7.1.ミランに完敗】



 それぞれの仕事が終わる頃、ゴミ箱に溜まった大量の残飯をかき集め、キッチンを抜けた先のゴミ捨て場に持っていく。そこには大きく頑丈なコンテナが置いてあり、なんでもかんでも、その中に投げ入れる。野良猫が何匹もその辺りをうろついている。コンテナがゴミで満たされる頃、専用のトラックがやって来て、空のコンテナと入れ替えて、何処かに走り去ってゆく。


 最近、ムフと一緒にチェコから来たミランもキッチンのゴミを捨てにやって来た。私はアンディを始め、ムフやミラン達、英語が話せない辛さを知ってる組と交流が多かった。ミランも私を見つけて、声をかけて来た。チェコでバレーボールをやっていただけあり、背が高く、筋肉質だ。こういう時はお互いさり気なくタバコを出し、束の間、仕事をサボって立ち話をする。


 そこへまた1人、ゴミ捨てをしにやって来たのは、アフリカ系の同い年位の女の子だ。彼女はボランティアでも、キブツニークではなく、外からここに働きに来ている。朝、私が外で歯を磨いている時、何度か見かけた事があった。

 何日か前に1度、彼女が重そうなゴミを捨てようと持ってきたのを見かけ、「手伝おうか?」と声をかけたものの、結構冷たく、無表情で「いい。」と断られた事があった。


 今日も彼女は、相変わらず重そうなゴミを運んでいた。先日の事が脳裏をよぎる、、、手伝おうとすると嫌がられる??

 そこに間髪入れずにミランが動いた。声もかけずに、彼女のゴミを奪い取り、ヒョイっとコンテナに投げ込んだのだ。呆気にとられるだけの私。無表情な筈の彼女は、ミランに満面の笑みでお礼を言った。その笑顔がなんとも言えず可愛かった。彼女がものすごく美人だと気付かされた。そして私には目もくれる事なく戻っていった。


 敗北感、、、完敗だ。これが優しさ。これが紳士という事か、、、声をかけた時の彼女の目は、「見りゃわかるだろ!いちいち聞くなよ!」と言っていたのか、、、いや、違う、、単純に「こいつウザぃ!」だな。


何事もなかったかの様に、タバコを蒸しているミランの背中が、いつにも増して、より大きく見えた。



【7.2. 仕事の後、そしてシャバット】


 

 ボランティアのダイニングルームは「キッチンルーム」とも呼ばれ、晩ご飯は各々に料理をする。キッチンルームを管理するボランティアの仕事もあり、主な仕事は冷蔵庫をいつも食材で満たしておく事だった。パン、シリアル、トマト、キュウリ、卵、チーズ、牛乳、ヨーグルト、ツナ缶、ソーセージ、冷凍パティなどなど。基本出来上がるのはトーストかサンドイッチだ。


 ここに来た初日の様に、一同に皆が介する事はあまり無い。皆、思い思いに食事をとり、コーヒーや紅茶を飲み、タバコを吸ってくつろいでいる。使った食器は自分で洗い、片付ける。はじめての日を思い出す。たった一杯のカフェオレをも、自らの主張で得る事ができず、アンディの心配りに甘えた夜。今は、気怠くコーヒーを飲みながら、目玉焼きとトーストを焼く日々。昔から目玉焼きには醤油と決めていて、少し高価だったが、ショッピングモールで見つけて購入した。


 19時から21時くらいの間は、ダイニングルームを通り越し、だだっ広い原っぱの先に無料のカフェもオープンする。外にもテラス席があり、自分で飲み物と、その日用意されているスイーツ、主にクッキーや菓子パンをもらい、やはり思い思いに席につく。様は、仕事の後のフリーな時間はみんな暇なのだ。でもそんなフリーな時間が私にとってはとても良い英語習得の時間となり、夜になるまで人の輪に入り、世間話に花を咲かせていた。

 「テレビルーム」もあったが、イスラエルの番組と英語のニュース番組しかやっていないので、皆あまり寄り付かなかった。キブツの中には、日用品を売っているショップもあり、我々はそこで洗剤や歯ブラシ、タバコ、ビールなどを購入する。


 土曜日は「シャバット」という安息日で、すれ違う人に「シャバット・シャローム」と声をかけた。家族で語らい食事をする、週最後の日で、土曜日の晩だけは、ダイニングルームで豪華な夕食が振る舞われ、週一オープンするバーも盛り上がる。特にボランティア達にとってはただのパーティーなので、皆一様に飲みまくる。



【7.3. コウモリ、アリ、ロバ、犬、猫、ネズミ】



 キブツは基本は原っぱで、何種類もの椰子の木があちらこちらに生えている。椰子の木の葉は、誰かが切り落とさない限り枯れても付いていて、コウモリの寝床となっている。


 たまに草腹を注意して歩くと、幅5センチ程の長い道を見つける事が出来る。これはアリの通り道で、ずーっとそこをアリの行列が歩く為、草がなくなってしまっている。


 珍しい生き物と出会う事もある。昼寝をしていると、砂利を踏み締める音が部屋の外で、いつまでも聞こえてくるので誰が居るのかと、扉を開けたら目の前に2メートルほどのロバが居て驚いた。


 犬は大抵、飼い主がいるが、やはりキブツの中で自由に生活しているので、外でお茶をしていたりすると出会う事がある。朝必ず私を迎えに来る白い犬の話は後で語るとする。


 野良猫はいつも食べ物を狙っていて、嫌うものが多かった。寄ってくると水をかけられたりしていた。人の目を盗んで餌を投げると、数匹が凄い勢いで取り合った。そんな中、子供を産んだは分りの、ひと際人懐っこく、綺麗な1匹を私とアンディは密かに可愛がった。お乳を子猫に与える為、栄養が必要でその母猫だけ、皆が食べないキューリを食べる事に気づいた。キューリだと、他の猫と奪い合いにならずゆっくり食べる事が出来た。


 絶対に捕まえられないと言われていた、小さなネズミがたまに部屋にでる。親指くらいの胴体で、見た目は上品で可愛らしいのだが、嗅覚が恐ろしく強く、部屋に食べ物を置いておくと、必ず見つけ出して齧ってしまう。

 後輩が高い送料を払って日本から送ってくれた日本食一式の中の蕎麦の袋も開けてしまい、食べられなくされてしまった。何度も罠を張るが、物凄いジャンプ力とスピードで、いつもあと一歩で取り逃す。

 そんな折、私は画期的な罠を思い付いた。簡単に作れて誰でも直ぐに捕まえられる罠だ。ネズミの能力、行動パターンなどを分析した結果の産物で、構造は至ってシンプル。スーパーのビニール袋を、テーブルなどからぶら下げて画鋲で留める、その中に何か食べ物を入れて置くだけ。

 嗅覚の強いネズミは、夜な夜なやって来て、食べ物に有り付こうとビニールを覗き込み、その中に落ちる。ビニール袋なので得意のジャンプ力も発揮できない。暴れるとビニールは音を立てるので、寝ていてもすぐに気付く。獲物が入ったら、袋の口を閉め、部屋から離れた所に逃してやるだけだ。


 このアイデアはボランティアのみんなを驚かせた。

 つづく…

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