【人生はプース・カフェ Barに集えば…】イスラエルの夏2001 ⑫『オンジュレイ』

お酒

プース・カフェとは、様々なリキュールの比重の違いを活かし、幾重に鮮やかな色が重なるカクテル。人生もまた色とりどりの思いでの重なり…

【12.1. アンディ】

 ここでの生活の中で、1番長い時間を過ごし、親しくしてくれた、そして胸を張って親友と呼べる存在となってくれたのが、チェコ出身のアンディだ。なんと言ってもキブツに着いた初日に、奇跡の温かいカフェオレを飲ませてくれたのも彼だったし、日本は美しい国なんでしょう?すごく興味があるんだよ。と言って私を勇気づけてくれたのも彼だった。


 アンディとは、英語読みで、チェコでは『オンジュレイ』と呼ばれてるのだそうだ。また、お父さんが居なくて、お姉さんとお母さんに育てられたので、チェコ語の女性言葉を使ってしまう事が多いと言っていた。

 金髪は腰まで伸びていて、こんな立派なドレッドヘアーの人に出逢ったのも彼が初めてだった。それは「ラスタファリ」と言うのだと教えてくれた。


 アンディとよく、昼下がりにボブマーリーの曲を聴きながら、一緒にコーヒーを飲んだ。ボランティアの仕事を終わると、大体毎日外に出してあるテーブルでチェスをする。アンディは自分のウォーターパイプを持っていて、そこに火を付けると何となくそれを吸いに人が集まって、回し吸いをする。ドゥルーズビレッジと言うところに行って買ったのだと言う。そこで買うと旅行者価格にならず、現地の価格で買えるし、かなり多様な柄やサイズから選べるのだそうだ。


 マイルドセブンをワンカートン日本から持って来ていた。父の職場を手伝ってくれていたお姉さんが餞別に持たせてくれたものだった。私が中学生になった時、初めて制服姿を見せたら泣いて喜んでくれた裁縫の熟練の職人さんだ。


 マイルドセブンはイスラエルでは珍しがられ、味も良いとみんなに喜ばれた。アンディも気に入ってくれて、1箱あげたものを大切に吸ってくれていた。


 椰子の木を英語で「パームトゥリー」と言うことを教えくれ、誰かが枯れた枝葉を切らないと、それは自然に落ちる事は無く、木の幹を覆うようにぶら下がっているて、コウモリにとってちょうど良い巣になっているのだそうだ。確かに、夕方に背の高い椰子の木を見上げるとその周りを何匹かのコウモリが飛んでいるのが見えた。


 ある日、アンディは切り立ての綺麗な椰子の木の枝を1本持ってきた。長さは2mくらいか。近くで椰子の枝をを切っていたから、持ってきたのだと言う。何日かすると捨てられてしまうとの事だった。


 もう少しすると雨季になるから、部屋の入口に置いてあるテーブルの上に雨除けを作ろうと誘って来た。早速、2人で延10本ほど拾いに行った。そして、近くの作業場のおじさんに釘と丁度いい角材とハンマーを借りて来て、パームトゥリーの雨除け日差しを作り始めた。


 アンディの彼女のリアが現れた。キブツニークだけどロシア系のショートカットの女の子だ。いまいち「彼女」の定義が分からなくなる時があるが、いつも2人は会うとキスをしていたので、彼女なのだろう。


【12.2. ディスコパーティー】

 2ヶ月に1回くらいのペースでだっただろうか。他の大きなキブツで開かれる合同ディスコパーティーに行った。専用バスが迎えに来てくれて、幾つかのキブツを経由し、ボランティアをピックアップして行く。

 カファマサリクからも、クレア、ピア達その他アンディ、そして私含め8人ほどが、迎えのバスに乗り込んだ。もうみんな程々にお酒が入っている。


 ホールは、カファマサリクのバーを大きくした感じた。全体的に暗くだだっ広く、幾つかのミラーボールが眩しく反射して、ランダムに朧げな記憶のための視力を与えてくれる。


 ダンスホールでクレアやピア達は、いつの間にか溶け込んで、どこか、誰か、と踊っていたと思ったけど、暗さと人の多さで見失う。そんな中、アンディのグレイトヘアーは、見つけ易くてありがたい。


 男達はビール片手に、何かのきっかけを探す様に、ミラーボールの光の先を追いかける。私とアンディもビール片手に何となくリズムに乗る。

 彼はいつもギラギラした感じを出さない。自然体でその場を楽しむ。


 私もディスコなんて初めてだし、どちらかというと苦手だし、好奇心で来てみたものの、何をして良いか分からない。こうしてアンディとビールをのんびり飲んでいられた方が落ち着く。


 帰りのバスの時間は聞いていたけど、他のみんなはどこに消えたのか、、、まあ、いいさ、アンディは見つけ易いから、、、、


 ふと、そんなアンディを見ると、その背後から、熱い視線とボディラングエッジを送ってくる女の子がいる。全力で手を振りながら、彼女は遠くから何かを話しかけようと叫んでいる。

 アンディも気付いて彼女の方に向かって行く。


 大抵の親友がそうであるように、突然の出逢いを優先して私を置いて消えてしまう。モテモテのアンディは彼女の肩に手をまわす。彼女は愛おしげに彼の長いドレッドヘアーに指を絡める。


【12.3. ハイリー】

 重低音の効いたスピーカーからのビートは、アルコールと混ざり、意識を少し薄めさせてくれる。気がつくと私は5人程のボランティアに囲まれている。ん?あ、アジア人だ。イスラエルでは、ほぼ初めてくらいに会った。

 彼等もアジア人に会うのは嬉しかったのか、片言の英語で次から次へと声をかけてくる。コリアンだそうで、何人か友人同士でキブツに来たのだと言う。


 1人で来ている私に、君は勇敢だとか、英語が上手だとか、やたら褒めてくれる。1人で来た当初、心が折れそうになった事と、はじめは彼等よりも話せなかった事を伝え、持っていたビールで乾杯をして、お互いの幸運を願った。


 更なる出逢いに驚く。またアジア人とすれ違う。一瞬目が合う、その瞬間に2人の足が止まる。「えっ、日本人?」どちらとも無く言葉が出る。彼女もイスラエルで日本人に会うのは2人目だと言う。私より、2ヶ月前くらいに来ている年下の先輩だ。異国の地での同郷との出会いに感動する。その反面、私達は馴れ合わない目的で来ていると、お互いに感じる。「またどこかで。」と言って、また会えた人もいるし、会えなかった人もいる。


 「Masa!」と呼ぶ声。


 即席のカップルは笑顔で私の前に現れた。「ハイリー」とアンディは紹介してくれる。彼女は兄弟でも紹介されたかのように、親しげに私とハグをする。こういうところ、すごく不思議だなと思う。さっき、声を掛けたばかりの相手は、直ぐに信頼のおけるパートナー、その友達はもうブラザー。そして、キッパリと時が来ると離れたり、離れなかったり。距離感がフレキシブル。


 帰りのバスで2人はずっと抱き合ってキスをしている。クレア達は呆れ顔。チェコガイ2人はあまり気にせず話している。他のキブツから来ているボランティア達がバスの後部座席を陣取り大騒ぎでエクアドル国家を歌っている。


 「寝るのなんて簡単だぜ!」と暴言を吐いていたりする者もいて、賑やかだ。


 ハイリーは結局アンディの部屋に3日泊まって、自分のキブツに帰って行った。その間、たまにアンディの部屋に行くと彼女がいたので、私も仲良くなった。普通に食堂にも食べに来ていて、キブツは自由だなと思った。リアとハイリーがアンディを取り合わないか心配したが、不思議な事にその期間、2人が会う事はなかった。


 1度彼女を「ハイリー」と呼ぶ発音が上手くできず、私は「ハニー」と呼んでしまったらしく、それに間髪入れずに「ハイ、ダーリン」と返してくれた。

 そして、ハニーやダーリンと恋人を呼ぶのは、他と呼び間違え無いようにする為でもあると教えてくれた。


 人生で初めて「ダーリン」と呼ばれて、ドキッとした。


 そして、この事は、親友の「オンジュレイ」には内緒にしておいた。

 つづく…

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