【人生はプース・カフェ Barに集えば…】イスラエルの夏2001 ⑩ 『経験値!?〜気になる視線〜』

お酒

プース・カフェとは、様々なリキュールの比重の違いを活かし、幾重に鮮やかな色が重なるカクテル。人生もまた色とりどりの思いでの重なり…


【10.1. 気になる視線1】


 2ヶ月が経った頃から、キブツの中での慣れた日々が始まった。たまに日本に電話を掛ける事もあった。故郷の日本にも、日常があるようだった。そんな時だけ、自分が日本人だと言う事を思い出した。


 基本的にキブツにいると自分が「ナニジン」なんて事を気にする事は無くなっていた。

 大概の世界がそうであって欲しいのだが、様々な人や要素が混じり合うとカテゴリーの意味合いが薄れていく。

共有した価値観や時間や経験や分け合った物によって尊敬や信頼が育まれてゆく。


 来た時はアジアの東端の日本出身です。とか、言っていたけど、今は、私はビザを持って堂々とこの国で暮らす、1人の人間として胸を張っている。いちいち国籍の話とかはしない。


 聞かせて欲しいのは国籍ではなく、「あなたの事」で聞いて欲しいのは「わたしの事」だ。


 気付いたらそんな風に考える様になっていた。背が低いからとか、イケメンじゃないからとか、日本人だからとか、そう言う事で人を判断する人はいる。それも良いと思うし、私も少しする。でも、そう言う事で判断しない人もいる。それも良いと思う。

 私は私のまま、それで良いと決めるのは私で、そんな私を良いと思う人がいたら、それを喜べば良くて、否定する人がいても、そんな事を気にしなければいいのだ。


 イスラエルに来たばっかりの時に朝の食堂であった綺麗な女の子に、なんでこんな私を。君より背の低い私に、英語もろくに話せない私に、「どうして?」「話しかけてくれたの?」は、愚問だった。

 彼女は彼女の価値観を持って、私は私の価値観を持って、好きにすればいいのだった。


 なんか、少し自信がついた気がする。なんて思い始めた頃、なんとなく視線を感じる様になっていた。


 ランチの後、洗い場でデービットと、束の間のミーティングをしていると、ふとその横にいた子の視線を感じた。振り向くと、目と目が合う。彼女はためらいもないキラキラした笑顔で「ハロ」と声をかけてきた。


 その「ハロ」は宙に舞い、花びらのようにハラハラと私を包み込んだ。




【10.2. 気になる視線2】

 

 しかし、我に帰ると、、

 あれっと、思った。


 なぜ彼女か?声をかけて来たのか。

 彼女には嫌われてしまったと思っていた。

 前にミランと2人でゴミ捨て場であったアフリカ系の女の子だ。ミランがカッコよく彼女のゴミを捨ててあげて、私はそれを見ていただけの人。


 なぜかその彼女が満面の笑みで声をかけてくれている。改めてみると、整った、清潔感のある、綺麗な笑顔。


 大学で3年間過ごして知らない女の子に声をかけられた事など、1度もなかった。


 これは、海外パワーなのか!?

 声をかけられるだけで嬉しい。。。


 「ハロー」と返して、その後、何を話すかを考えているうちに、彼女はクルッと向きを変えて洗い場を出て行ってしまう。


 デービットと顔を見合わせる。お互い無言で、「なんで声かけて来た??」とクエスチョマークが飛び交う。そしてなぜかデービットが、「She is nice.」と、言った。


 キブツニ来たばかりの時、ユダヤ系のスーパーイケメンに、やはり洗い場で声をかけられた。彼は会う度に呼びかけてくれてくれた。ほとんどろくな返事もできない私に目線を合わせて、丁寧に話しかけてくれた。


 彼はキブツニークだった。初めての友達が出来たと思った。しかし若干の違和感を感じつつあった。はじめはイケメンは、みなそう言うものだと思って気にしていなかったが、、、明らかに彼の瞳がキラキラしている。笑った時の口元が愛らしすぎる、、、声が甘すぎる、、、


 彼は私を恋愛対象として声をかけてくれていたのだと、直感した。直接は言われなかったが、、、


 それは、それでよかったが、初めての経験なので、驚いて距離を取ってしまった。

 まだ、相談できる相手もいない時だった。応えられないその気持ちを、少し怖くすら感じてしまった。


 一度、私が素っ気ない態度をした事で傷つけてしまったのか、以前のように遠くからでも私を見つけて声をかけてくる事はなくなった。


 結局、彼と仲良くなる事はできなかった。きっと友達には、なれただろうに、私の経験値の無さによって、彼とは「知り合い」程度の関係で終わった。


 あの時も、何となく感じる気になる視線があった。視線の主がスーパーイケメンだったので、私もついつい見返していたのかも知れない。




【10.3.気になる視線3】

 

 朝一で部屋の前に出て、通りの見える石垣に腰掛けて歯を磨く事が日課になりつつあった。そもそも洗面所が自室に無かったから、表に出て顔を洗って、歯磨きをするのだか、トラクタージョブが始まってから、早起きになった。


 朝が気持ちがいいので、少しだけ早起きしてのんびり歯磨きをするのが好きだった。


 朝から表に座って、キブツの外から働きに来る人達をボーッと眺めていると、例の彼女がたまに見かけた。彼女は2人の同年代の友達と3人でゲートの外からやってくる。歩きながら話す姿は朝から楽しそうだ。


 女性が3人揃った時は、妙に楽しそうに見える。いつも何を話しているのだろう。


 そう、ぼんやりと眺めていると、中の1人が遠くから、私を指差すように見えた。「見て、朝から外で歯を磨いている変な人がいるよ!」とか、言っているのか、、、その視線がとても気になる、、


 あっ。


 真ん中にいた例の彼女が、私に向かって手を振ってくれた。私も咄嗟に振り返したが、私はウブ過ぎて混乱した。


 そのまま3人の背中はダイニングルームの方へと歩いて行ってしまった。


 たまに、すれ違う事はあっても、他ののキブツニークやボランティアではない彼女とは、ゆっくり話をする機会がない。


 洗い場でのすれ違い際の挨拶や、朝の歯磨きの時の遠目からのコミュニケーション。彼女達が通り過ぎる時に手を振ってくれるのは日常化していた。


 「高嶺の花」的女性の方から好意を受ける経験があったのは小学校の低学年の時以来か、、

 友達という概念以外が明確に意識化されていなかった頃の話だ。話しかけてくれるのは心の底から嬉しいが、未経験な事態に戸惑う、、、


 その朝も、そんな気持ちを抱えながら彼女の視線を探していた。そして突然、事件が起きた。


 いつもの様に3人で歩いて来る。3人は1度立ち止まる。そして彼女だけ、こちらに向かって歩いてきた。2人は振り返らずに去って行く。


 極度の緊張と混乱、、、


 こちらに彼女が向かってくる、、


 よく考えたらいつも、部屋着だし、、髪ボサボサだし、、変な服着てるし、、、裸足だし、、、歯磨きもう終わってるし、、、、ボサボサだし、、、


 気がついたら私は隠れるように、部屋の中へ入ってしまっていた。。。外から声かけてくれるか?いや、それは無さそう、、、無いのか、、、


 ああ、後で食堂で会ったら話しかけよう、、まず謝ろう、、ああ、、、、、、ほんとびっくりした、、、


 食堂で再開した彼女は、今までの愛くるしいキラキラの笑顔からは、到底想像できない程の、冷たい視線でこちらを一瞥し、直ぐに目線を逸らして、行ってしまった。


 私の「ハロ」は空を舞ってヒラヒラと地面に落ち、そのまま洗い場の排水溝に吸い込まれていった。


 それを見ていたデービットの「気にしまくりの視線」が痛かった、、

 しかし、何か察したのか、もう「She is nice.」とは言わなかった。


 あの時、勇気を持ってこちらに向かって来てくれた彼女に、、、、私は勇気を持って応える事が出来なかった、、、、

 つづく…

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